『使命感に生きる』
保護者会にて
今日、息子が通っている、そろばんと書道を教えてくれている塾の保護者会がありました。
ここは、80代の年配ご夫婦が、おふたりで子供たちを指導してくれていました。
しかし、奥様はガンに犯され、昨年の暮れから入院。
ご主人は元々、国指定の難病を抱えておられ、年初から体調を崩され、お休みが続いていました。
後継者もいらっしゃらないので、いよいよ閉鎖せざるを得ない状況となり、保護者に経緯を説明したいということで、保護者が集められたのです。
先生の来し方
塾を閉鎖するにあたり、先生から色々なお話がありました。
先生は若い頃、中学校の教員だったそうです。
なぜ、先生が教員を志したのか?
そこには、壮絶なドラマがありました。
先生は、5人兄弟の末っ子。
家は貧しく、一番上のお姉さまは、生まれつきの障害を持たれていたそうです。
そのお姉さんの病気を治したい、同じような障害を持つ人を治したい。
そんな想いで、当初は医師を目指していたのだそうです。
しかし、医師になることは出来なかったので
「医者になれるような、優秀な子供を育てたい」
と、目標を変え、早稲田の教育学部に入られたのだそうです。
その学費を捻出したのは、兄上。
学費を出してくれた兄上に恩返しするためにも、立派な教師になろうと、心に誓ったそうです。
先生の信念
今の塾を、ご夫婦で開かれてからも
「子供たちに寄り添い、成長の手助けをする」
ということを念頭に、数十年もの間、がんばってこられていました。
特に、書道に関しては、生徒が横浜市の書道展に毎年、入選者を輩出していたので、地元の中学の先生が、指導法を見学に来るくらいだったそうです。
そんな場所を閉鎖するのは、先生にとっても断腸の思いだったのでしょう。
先生は、涙ながらに
「もっと子供たちと関わって行きたい。しかし、かわいい子供たちに、無責任な指導をするのは、自分が許せない。本当に申し訳ない・・・」
そう仰っていました。
「ああ、この先生は、子供たちのために、“命を使って”来られたんだなぁ・・・」
私は、そう実感しました。
自分の信念に忠実に、子供たちの成長に関わって行く。
なんて、素晴らしい生き方をされてきたのだろう・・・。
こんな生き方を、自分もしてみたい。
そう思わずに、いられませんでした。
夜になって・・・
息子が突然、涙をぽろぽろとこぼし始めました。
「僕、そろばんに行けなくなって寂しい。もっと先生に、そろばんもお習字も教えてもらいたかったのに・・・( ノД`)シクシク…」
息子は、そろばんのおかげで、算数が好きになり、得意になりました。
字が上手になりたいと、書道を始めたのでした。
短い時間でしたが、もう、先生の教えは、息子の心に根付いていました。
先生が蒔いてくださった下さった“種”は、目を出しています。
今度は、先生のお気持ちを、親である私たちが育てていく番ですね。